第五回
お題:本
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チャンプ作品 (同点2作品受賞)
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509◆FEgWNVKI
- 44 名前:書物 投稿日:02/06/24 13:20 ID:???
- 犬の後ろ脚した
黒い少年が 赤煉瓦で作られた迷路のような町を 月光に黒光りしながら歩き
家へ帰っていった
少年の家には 一冊も本がなかった この町に本屋もなかった だがそれでも本は
彼の人生に深く入り込んでいた
今日 星の間を歩いていた時 二階の窓からガラスを破って
放り投げられた人間を少年は見た 赤茶色の毛並みに 黄ばんだ牙をもつ女 頭部を赤煉瓦の敷石に 深く埋め
死んだまま泣いていた
あの女を放り出したのは 誰だったんだろう? 部屋には彼女独りだった
少年は
机に座り 空の書棚に 彼の書物を また一冊立てかける
さまざまな人間が さまざまな世界が
空の書棚に並ぶたび 少年の黒い毛は 毛色を変えていく
白くなるのか さらに黒くなるのか
あるいは犬の脚が床を蹴って 窓から少年を放り投げるかもしれない
星の間で躓くたび 少年の書棚には書物が並び
もはや少年はそいつらを 窓から放り投げることができなくなっている
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チャンプ作品に対する批評 |
Canopus◆j1h.j3e.
チャンプ候補>>44は世界観がいいですね。謎めいた一人の少年が星の間を歩いている。
彼の人生そのものがひとつひとつの書物。書物にいざなわれ、あるいは書物に裏切られて。
最後の終わり方も、少年の心に火がともるようで、いっそう謎めいていて、いうことナシですね。文句なしの3点。
撫子さん◆eEr7LE3I
あたしのチャンプー候補は断然>>44です。
97てーん!☆じゃなくて、3てん。
かっこいい言い方をすると、詩ならではの「立体化された未知世界」
を見せてくれまちた☆
詩ならではだからマンガにたとえちゃダメなんだけど、あえてたと
えりゅなら北斗の拳。あるいは寄生獣かな☆カオスな世界に立ち向
かうちっぽけな犬の脚の少年。ナゾめいてておもちろいし、フンイ
キがある☆
最後の一行にどれほどのイミがこめられてんのー!☆
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構造◆1Q0OhnlE
- 76 名前:構造◆1Q0OhnlE 投稿日:02/06/26 23:58 ID:???
- わたしはいつぞやのあなたのようにすっかりと
忘れてしまった
記憶を手繰ろうとしたロープで肉刺だらけの指 しめりけで頁のひとつひとつをダニを潰すように みつめられる可読の染みは
無論、血もなく 匂いなどあるはずもない すでに、違う場所の革命だった
首を落とされる筈の王は居酒屋でアヴサンを飲み
ついに陵辱されるはずの后は甲虫を収集した
夜と悲しみが支配したあなたの頭脳はそれを誤解し
俺は帝国だ!俺は皇帝だ!雷鳴そのものだ!と 全世界をみすえる山へと上り詰めて叫びだした
おそろしいまでのけたたましさ!
いままで松葉で瞼を突付かれ 耳たぶを指で弾かれた記憶が 権勢を誇る鉄条網製の王座へと いざなう警吏は
一秒単位でぐらりと廻って いくらか酔いをさまさせた
それらは鼓膜がやぶれるように かなしいけたたましさを均等し
ひろげて大音量の無音に
かろうじてみえる風になって ひとつの音幕になりかわる
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チャンプ作品に対する批評 |
Canopus◆j1h.j3e.
とにかく冒頭の二行にホレました。作者の息遣いが聴こえてくるようです。
カタストロフィックな情景描写と強いことばのレトリックもこの詩にマッチしています。
内容は少し弱い印象かな。今度はルールを守ってねの3点。
509◆FEgWNVKI
とにかく隙がまったくないですね。
タイトルがないのが不満ではありますが、まさに「本を読む」という行為を、
靄のように不確実の、しかしさまざまな形をもちうるものとして、多角的に書いています。そしてそこに吹く風。
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準チャンプ作品 |
該当作品なし |