第三十五回

お題:

チャンプ作品
ame◆yUHAxrOw2c

573 名前:「スラッシュ・ドット・スラッシュ」 1/2 投稿日:03/05/20 23:32 ID:xLESavJ/
<html>
<head><title>
スライドしたあとの空
</title></head>
  <!--それはスライドするためのものではなく,または止まったままの
    どうでもいい空-->
<body>
<h3>その鮮やかな糸の上で</h3>
<p></p>
<p>
いつもそうやってある空を目指していた誰かが<br>
ある雨の日に走って帰ろうとしたことも<br>
見上げた山の近さに忘れられないと叫んで<br>
何も返ってこなかったその寂しさを抱えているなら</p>

  <!--実際その風景があったところは背景も何もなく
    語られる対象もいつも霧の中にいるような空想である-->

<p>
なぜか雲のなかった今日の青空に向かって<br>
すらりと立ち上がっていた煙突の鮮やかさのように<br>
テンポを速めていく足音を追いかけていったのは</p>

  <!--その願いだけ叶えられてしまえばいいと思うのにも関わらず
    語り語られる主体という存在をあれだけ過信して人々は饒舌になっているのだが-->


574 名前:「スラッシュ・ドット・スラッシュ」 2/2 投稿日:03/05/20 23:33 ID:xLESavJ/

<p>
どの時間を向いても途切れない気持ちの後で<br>
その先だけを見すえるような目の<br>
欠片だけ集めてしまって今日は<br>
もう一度あくびだけをしたのです</p>

  <!--その次の朝目覚めて,彼はさっきまで自動筆記されたらしいものを破り捨てた
    感傷が明らかに文字に干渉していくその光景を見なかったことに
    ある意味で安心を覚えつつも,ちょうどひとりでに歩き出した神輿のような
    場違いさと恥ずかしさを今は気づき過ぎてしまった,ということのようだ。-->

<p>
その先にはきっとスライドしてしまった空<br>
散らばる真っ白な糸の向こうの 青い空</p>

  <!--以上,ある時点での記憶と引用からの再構成でこのファイルをお送りすることとした。-->

</body>
</html>

  <!--なお,このファイルは3日後に自動削除されることとする。アーメン。-->



チャンプ作品に対する批評
Canopus◆DYj1h.j3e.
2点。
タグ記号の中にことばを包み込む料理の仕方が見事。
内容は何回読んでも、心の中に入ってこなかったのが不思議、でした。
残るのは、そこはかとない空虚感のみ。
タグの中がこんなにもことばで満たされているのに、中は空っぽなんです。そこが好き。
最終部はない方がいいような気がしました、の2点。

ドン亀様◆YdTp8oxx7.
1点。
スッキリした言葉だ。空だ。抜けてしまった後の空だ。しかし、タグかよ!!!
ドリキャスの俺様をナメてんのか!!!!!!!!!

しいな まほろ◆tYbIWmaS5o
1点。
全然わからないので。降参点。

霧都◆SNOW/oy/Uw
3点。

たもい◆P6tSlrTfiY
3点。
もう、言葉紡ぐのに必死感ないの。仕上がった絵、画用紙に変な汚れなし。





準チャンプ作品
 (4作品同点受賞)

547 名前:もののことわりB(1/2)投稿日:03/05/17 14:03 ID:UV+W6aFq

私の当面の目標は
完璧な講義ノートを作ること

片山教授の物理Bは格別だ
相対性理論が導かれる過程
その数式が省略なしで
端正な線で板書きされる

私は複雑な積分式を大急ぎで書き写す
スライド式の黒板計4枚が埋まると
偉大な歴史はあっというまに
チョークの粉に帰ってしまう
90分で約2巡半

教授は数式ですべてを語り
数式がすべてを語っていた
私は頭を空にして写経する
是故空中無色
無無受想行識

548 名前:もののことわりB(2/2) 投稿日:03/05/17 14:04 ID:UV+W6aFq

悪友は陰口をたたく
「あいつは板書きロボットだね
部屋に戻ったらズボンの裾をまくって
膝の蓋をぱかっと開けて
脛にガソリンかなんかを入れてるね」

ある日私は迂闊にも
生協食堂で教授の斜め向かいに座った
私と同じシチュー付きAランチ

「あなたは私の講義に出ていますね。どうですか難しいですか」
「ノートを取るのに精一杯です」
教授はシチューの味を微分するだろうか

「片山教授とこないだ一緒に食べちゃったよ」
「へえ。食べる振りができる仕様なんだな はははは」

彼を笑わないでと言いかけて
適当に笑うことにした
教授のご意志をわかっているのは
私だけでいい

中身は理解できないけど





570 名前:へへへ    1 投稿日:03/05/20 00:46 ID:lRA/Xmm9
ののなかには なにがあるのか
 のを穿ち中を見ると めになる
 めはしかし
 つかんだ真実をぬと
かくしてしまう

 おいこら なにがあったんだと問い詰めても
知りたいかい? ひひひ
とワラわれると 何かもう知りたくもなくなった
あんただって交わる よくあることです

あんなナカのこと 知りたがるなんてバカですよ
 ただ交差するだけですよ ハハハ
 と笑われると 
 最初の疑問が干からびて
どうでもいい 感じになった

571 名前:へへへ   2 投稿日:03/05/20 00:49 ID:lRA/Xmm9

 ただ
 おい
 あんたも
 穿ってみることはできる
とどこかで言っているような気がしたのは
干からびて
 まだ残っている疑問から開放された 生気が
 オレのまわりで揺れているのかもしれないが
でも干物はもう
ほしくない
 つ^^*うか 干物の生気のナカで
 がんばろ 
と思ったのだが この
 ののなかには 何があるのだろう
 のぞいてみようか
これからの
 ことだしと思った
なにもないよともう一度 生気の言う声が聞こえそうだが
 へへへ
と笑っておこう





しいな まほろ
◆tYbIWmaS5o


575 名前:たまごのきみ(1) 投稿日:03/05/21 01:25 ID:ASGAQFft
(1)
殻は、白くて岩みたい
なのに、その中に
きみがあることを知っている

(2)
白色蛍光灯の下で、きみは
白いお皿の上で、何度もわたしと逢ったことがある
見慣れたきみは、スマイリーみたい

そんな風に
絵に描ける、きみだった

(3)
もっときみを知りたいと思った、何気ないお昼に
殻、そのてっぺんに
手動ドリルで、穴を開けた
チックン、ギルリと、穴を開けた

576 名前:たまごのきみ(2) 投稿日:03/05/21 01:27 ID:ASGAQFft

覗く、と中は
透けた肌のように、意外に明るくて
どろりとろりとした原初のスープに馴染んで
きみがぼんやりと、居もしない魚たちを目で追っていた

わたしはそれを絵のように記憶して
しかしわたしはそれを絵に描けない

それは、きみのぼんやりが
ぼんやり複雑すぎたから

きみの明るさも
きみの哀しみも
きみの誕生も
きみの終焉も
きみの、きみの、きみの数えきれないすべてが
そこにあったから

わたしは、きみに呼びかける
そっから産まれておいでよ
こっちへ、おいでよう

きみは、顔じゅうに目のくっついた蜘蛛の表情で
ボクヲ、知ッテクレルノ?
ボクヲ、ワカッテクレルノ?
ボクヲ、ボクヲ、ボクガココニイル理由ヲ

    あっ、黒い
     これ、黒い?

577 名前:たまごのきみ(終) 投稿日:03/05/21 01:28 ID:ASGAQFft

静かに蓋を閉めた、私の意識を占領した思いは
クッキーを作る時、どうしてきみだけを使うんだろう?

(4)
なんでもかんでもを、いっぺんに
紙の上に絵の具でスタンプしていったら
最後にはどろどろの、とろとろの黒になる

あれは黒い、ような、きみだった

(5)
きみはスマイリーでいいんだよね
いつも朝食には白いお皿の上で、笑った絵になっていてね

(6)
単純だ、きみで作った、スクランブル

(7)
殻は、宇宙人の置いていった不可思議な
岩みたい
その見えない中に、きみがいつもいる

(0)
どのたまごの中にも、きみがいつもいる





595 名前:青い壜の中 投稿日:03/05/22 23:57 ID:XLc9OFCb

毛穴から差し込む星のような灯りに

私の体内は青く沈み 

濡れた石の手触りの 人の形のがらんどうで

ただ半透明に揺れる昔の犬や 姉や 男 同級生の幽霊の列が 遠くまで続いている


 横になって 遠く
 
 鼓動を聞いてた筈の 午後だった


ラベルの剥げ落ちた 青い小壜を抱いて駆ける

ああ やっぱり心臓のかけらも

脳みそもなにもない ただ天窓のように 明るく濡れた

眼球の向こう側に揺れる 日曜日のTV 新婚さんいらっしゃいのそのうしろ

 
 私の窓の中には ガラス製の青い空

 白く剥げ落ちた 真昼の月