第三十三回

お題:

チャンプ作品 (2作品同点受賞)
ame◆yUHAxrOw2c

327 名前:冬のスラッシュ 1/2 投稿日:03/04/28 21:34 ID:KYxh10rc
十時過ぎの時計みたいにスライドしていく温度計の
色のない水銀を散らばして滑っていく坂道と
波線の上で今日も踊る文字 笑いながら
組み立ててまた崩れていく砂糖菓子の街並

傘のきらめきが右回りに回っている
向きをてんでばらばらにしていて
上から見た誰かを楽しませていると
考えてもおかしくない……ような写真の影

「記号全て使った後の消し去った言葉たちに
  空白は何か呼びかけることもある……といいんだけど」

黒板の前から流れ出る空気を避けて行こう
鉛筆転がる角度を運任せのスポーツにして
統計上1万分の1の氷の斜め具合で
積み上げた窓ガラスが割れてしまう/缶から音を立てて滑る

目的論さえ無視して彼らが今日も走り去る

328 名前:冬のスラッシュ 2/2 投稿日:03/04/28 21:34 ID:KYxh10rc

眼をつぶっても逸らしても見えない種もない
仕掛けもなく「六角形からフラクタルへ」と叫ぶと
あの気温から落ちてくるスラッシュの塊
消えてしまっては証拠にできない 積み重ねた記号たち

黙ったままの雨合羽に囲まれて振り返る
灰を散らした空と交差する軌道で願いをかけた
流れ星はいつまでも降りてこない
明日も明後日も降りてくるのは変わらない琥珀色

 「願いもかけてみたけれど空白は透き通るだけ
  遠くへも届くことなく……跳ね返ってまぶしいから」

足音だけ残さないで足跡だけ残して
今日も長靴のような声が天井から
反響する爪先立ちの動物みたいな姿
走り回るその動きは降り/落ちてくる雪の動きと同じ

目的論さえ無視して彼らが明日を走り去る


気がついても春はまだ冬の氷雨を咥えたままで通り過ぎる



チャンプ作品に対する批評
Canopus◆DYj1h.j3e.
1点。
うーん、何も言ってないんだけど、レゴブロックみたいなことばの
構築、見てるようで見てないような情景描写…やっぱり、好き。

激辛正当派
◆PmUYNHN29Q
2点。
とりわけ「」付の独白部分に、オトコマエを感じます。
まあしかし、そんな長時間ポーズ取ってて疲れませんか?と言いたくなる、
僕の庶民的感性というものもある。「目的論」とかなあ。

グリーンブック◆VZ.CboVnb2
2点。
意味は良くわからないんだけど、字面&リズム&言葉の音が「カキ氷☆」している。
意味はわからないにはずなのに、読んでいて「あれ?」楽しいぞ。
意味なんて本当にどうでも良く、俺はこの詩が「うまい!」好きだ。

霧都◆SNOW/oy/Uw
2点。




快楽童子◆plhXCa4.HY

355 名前:よそ見 投稿日:03/04/29 22:42 ID:V5dJ4NKZ
ウチの犬が雪を食べています。なんか必死に食べてます。洗濯バサミのようにしっかりはさんで、かじってます。
時々すっぱそうな顔します。しみてるのか。おい、しみてるのか。
それでもふんごふんごと食べてます。

首を、ひねったり上下に揺らしたり突っついたりして、かわいいです。
ドッグフード投げつけてやりました
これを食え!

それでもこちらにすり寄ってきて、ぺろりと手を舐めてまた食事に戻ります

こいつの前世は雪男だと思います。
そう思うとおかしくなり、またドッグフード投げました。
しかしいつもならがっつくはずのそれを見向きもせず、雪を食べてます。


雪が憎らしくなりました。



チャンプ作品に対する批評
都立家政◆MD76fFko5o
2点。
作品全体を流れるその無邪気さを買う。終いだけが心残り。

ななほし◆lYiSp4aok.
1点。
面白かったけど、事実だったような感じ。スナップ写真の尾も白?

たもい◆P6tSlrTfiY
2点。
大好きです。犬だから、だけど犬じゃなくても、、、好きは種でしょ。
飾りで言葉使うでもなく、詩で憧れに変身しちゃうでなく。
好きと言う種、育てて貴方だからこその芽と花を、そして見せてくれる。
犬の無邪気、飼い主の心知らず。それ以上の虚仮?にされても、愛してるんだ。
タブー(←私独断の)全部侵してる。説明だし、かわいいとか言ってるし。
なのに、活きてる。詩は不思議、もっと好きになりました。

◆TemEEb7Qco
2点。
素直でよろしいので2点





準チャンプ作品
 (2作品同点受賞)
脚立◆Kt2/QQF/cI

267 名前:
恋するUFO 投稿日:03/04/23 11:25 ID:6vtDR8nk
ぼくはなにもできなくなって
UFOに会いに行った
その日はあいにくの雪で
着ていた上着はびしょびしょだ

UFOは僕の夢だ
UFOは僕を昇華させる
ぼくはUFOに恋している

ちかくの山の頂をすこしすぎたところにUFOはいた
ぼくはUFOに入りしばし談笑
そのうちに会話の内容もなくなり
UFOにあたる雪の音だけが広がる

UFOにたずねる
「たとえば雪じゃなくて花びらであっても」
UFOは少し黙って首を振った

ここにはいられない
ここにはなにもない
ただあるのは響く音

外に出ると
花びらが舞い降りる
真っ白な花びらはぼくにこう言った
「たとえば雪じゃなくて花びらであっても
きみの上着はびしょびしょなんだ」

そうだ
びしょびしょだ






337 名前:雪と箪笥と私と君と 投稿日:03/04/29 21:06 ID:R+EMWfPd
私、言う。
「もう冬ね雪が降るわね」
君、言う。
「雪の代わりに他のものが降ってくればいい。」

「…」

「たとえば?」
「何でもいいけど、箪笥とかでもいいし」
「へえそれはおもしろそうね」
「でも危ないかもしれないよね」

「…」

「もし箪笥が振ってきたら君を連れて宇宙にでも行くよ
そしたら箪笥が頭に当たって死ぬこともないだろうし痛
いということもないだろうし」
「へえそれはおもしろそうね」
「でもやっぱりそれじゃ寂しいだろうし誰か連れて行こ
うよ例えば君の前の彼氏とかいやでも彼は死んじゃった
んだよね俺が殺したんだもん」
「へえそれはおもしろそうね」

「…」

ここで延々と意味の無いお喋りを続けてあげる。
ここで延々と意味の無いお芝居を続けてあげる。

雪の代わりに箪笥が降って君の頭に当たってしまえばいいのに