第二十四回

お題:

チャンプ作品
Canopus◆DYj1h.j3e.

546 名前:白い自転車 投稿日:03/01/22 21:48 ID:yXlDQoTD
『白い自転車(オラシオ・フェレールの詩によせて)』

みんな
まだ覚えているかい?
あの白い自転車に乗った少年の神様を
くすんだベレー帽を耳までかぶって
よくとおる口笛でポルカを吹いていた
あの痩せっぽちだよ

少年の時代がかった白い自転車は
大通りを 商店街を 路地の津々浦々を
車輪を軋(きし)ませて走っていった
この町の誰もが少年を見かけた
少年の自転車が通ったあとには
彗星のしっぽのような白い光がベール状に広がり
懐かしいポルカの旋律がいつまでも残った
そしてこの町の誰もが その光を浴びたんだ

その瞬間から
町の小さな揉め事は解決し 車の中で悪態をつく人はいなくなった
いじめられっ子は友達と楽しく遊び 寝たきりの老人にお見舞いカードが届き
親に虐待される子供は姿を消し それどころか全ての子供たちが
デザートとプレゼントをもらって 仲良くそれらを分け合った
政治家たちは心の底から人々の事を考えて 涙を流して政敵どおし抱擁した

そんな突然で闇雲な
優しさと幸せに包まれて ぼくたちは
正直どうしたらいいのか分らなくなり しまいには激怒して
寄ってたかって少年の白い自転車を叩きこわしてしまった

少年の神様はしばらく自転車の残骸を見つめていたが
やがて無言のままどこかへ行ってしまった

547 名前:白い自転車;続き 投稿日:03/01/22 21:49 ID:yXlDQoTD

みんな
もう再会したかい?
あの懐かしいポルカに 彗星の自転車に
町のみんなに笑顔を分けようと必死に頑張ってる
ちっぽけな少年の神様に

この町にはまだ 深い痛みや憎しみや
暴力や悪意があふれているけど
どれだけ心が豊かになっても
生きるかなしみは消えはしないけど

夕暮れのひとり 帰り道
花屋の前に 電柱の上に みんなの心のなかに
曲乗りをしてくるりと回る
白い彗星の自転車に乗った少年を探しているんだ
みんな
覚えているかい?
あんなにも健気な少年の神様を

もう間違えない
もう間違えたくない
ようこそわが町へ
白い自転車の神様



チャンプ作品に対する批評
撫子さん◆ikeEr7LE3I
3点。
町は舞台にしか使われていないように見えるケド、
それが物語と切っても切り離せないっすー☆
白い自転車に乗った神様ってのも、町ならではだし。
町の人々一人一人の顔も見えてくるカンジ☆ なにより、誰が読んでも
「人間のかなしみ」が伝わるところ、万人向けの童話みたいな詩☆ 92点♪

激辛正当派◆PmUYNHN29Q
1点。
淡々と読めすぎてしまうのと、最終連の無邪気な締めかたを抜きにすれば、
リズムもいいし、描写も的確だと思う。
それだけに、ひっかかりが乏しく、「ちょっといい話」な印象に。

しいな まほろ◆tYbIWmaS5o
2点。
「白い自転車」よくある感じだけど、神様が白い自転車に
乗ってるところが不思議。後半がちょっと考え甘すぎるかも。

都立家政◆MD76fFko5o
3点。
「白?なんだそのチャリキは?」題名を見てまずそう思った。
批評目的でなく自然に字面を追っていた唯一の作品。プロ級。

ななほし◆lYiSp4aok.
1点





準チャンプ作品
撫子さん◆ikeEr7LE3I

526 名前:飽地(ほうち) 投稿日:03/01/20 11:51 ID:kPGOjp0H
プラスティクスと鋼鉄の まじわり
が産んだ沢山の子供 それは細い脚を無数にもつ
電子虫 か細い声で鳴いている
黒い箱のなかで
という町が ある

私がシャワーを浴びている時
排水溝の 奥から
きぃ きぃ と
きしむ無数の声を聞いた
という生活感覚は
すぐに虚構として処理された

振動しているみたい
なにかアパートの壁が
の夜に 体温を奪う風
よくできている システム
未来へ自然な凍死体を送る風
結託している のか 恐れて閉じ篭っている
のか この町は

527 名前:_ 投稿日:03/01/20 11:52 ID:kPGOjp0H

天蓋を開いて 覗き込む男の眼が見えた
夜空から 私たちを点検していた
という月へ 私は陳情する

私のユーザーよ 穏やかに眠らせてください

私は黒い箱の 天蓋を開き
号令を待って そこにいる虫たちに
反抗されている

許してください私にはあなたたちを自由にしてやれるほどの腕がない
(私のやり方に従わないいうことを聞かない偏屈な壁のようなプログラムは死んでしまえ)

好きなところへ勝手に歩かせると
探しものをするように歩きまわるだけなのが おもしろい
という 飽食
という 飽地

この町は 私の頭の天辺に乗っている