第二十三回

お題:

チャンプ作品
しいな まほろ ◆tYbIWmaS5o

364 名前:ふたたびレモン 投稿日:03/01/11 00:51 ID:Ww2IVYNh
オレンジやピンクの コミックスに囲まれた部屋で
シロメとヒトミの あいまいになる恋をしていた
あなたはどこにも いないから
わたし 慣れない手つきでレモンをかじった

あのとき うまく
かじれな
かった
レモンは間違って甘く
苦汁は部屋の外でだけ ひろがった

やがて
降るものは何もないのに 雪は積もりはじめ
紺色の制服を着せられたわたし ひとりぼっち
さくさくと雪の上を 黒い制服のあなたがやってきて
わたしにレモン手渡して そのまま擦れ違っていった

あのとき うまく

じれなかった
レモンの皮は 口のなかで痛いほど酸っぱくて
わたしは泣かされたように 走りだしてしまった


365 名前:_ 投稿日:03/01/11 00:51 ID:Ww2IVYNh
数えきれないレモンをかじった
歯の先から殺されるほどのレモンをかじった

いつかは うまく
かじ
りたい
と願い そして

太陽は輝く銀と 匿された陰を育てつづけ
果てまでも雪になった世界で わたしは
日焼けに痛む足を 雪の下に隠して
きっと一番好きなあなたと出会った

ふたたびレモン ふたたびレモン
がりりとかじるのが よいとわかってきた

がりりと うまく
かじ
ったレモン
は爽快に飛び散って

雪に黄色く おしっこの染みをつくり
わたしはそれ見て 泣いてしまった



チャンプ作品に対する批評
Canopus◆DYj1h.j3e
2点
繊細な描写、レモンのみずみずしさ、そしてレモンを「か/じる」技巧。
すんばらしいです。最終の描写も、私は喪失感としてふさわしいと共感しました。
「数えきれないレモンをかじった」で、一気に白けてしまったんです。
あまりにステロタイプだし、他の描写とも浮いているし、別の描写があるんじゃないかな、の2点でした。

ドン亀◆YdTp8oxx7.
3点。
点数、迷った。普通にうまくまとまりすぎてんだよな。
やっぱり最終連がすべてかもしれん。
ここがなかったら、ただの上手な恋の詩。1点がいいところだった。
綺麗に作られてきた詩が最後に内部から破壊される快感っつーか、
作者自身なんだかわからん世界に投げ出されてしまう虚脱感っつーか。
とにかくまぁ、これだけ皆が賛否両論繰り出す最終連であるからには、何かがあるのだろう。

激辛正当派◆PmUYNHN29Q
2点

うたた寝死人◆WvShSU0mOg
2点
私は平凡にレモン=恋と見ました。「手渡して そのまま擦れ違って」いってましたし。
やはり齧る際の改行は技ですね。
レモンに加えて雪、制服と色彩がクリアーで、またその影像の清々しさがストーリーに似つかわしい。
「おしっこの染み」は上手く実った恋の大破局かなと。又は"こんな筈でなかった"結婚子育ての染み。

構造◆/Cej999/v6
1点
個人的に最後の泣きました、はナシ。行為だけで感情の機敏を説明されちゃかなわん

霧都◆WISH/t.n/I
1点
綺麗に情景が見えてくる。悲しいのに暖かい心情に優しさを垣間見た。
言葉を微妙に分離させる方法がとても効いている。最終連はちょっと無理があるかな。
余程大量のレモン水じゃないとそんな風にはならないと思う。

クロラ◆oNwpnhIJYU
3点
読んでいて退屈するところがなくて、単語の選び方、構成に作者の余裕すら感じました。
最終連の突然の比喩と「泣いてしまった」を説明する感情の描写がないところで、
読者を慌てさせる効果もあるのかも。
けちをつけるところはないです。

yuki◆whnocyk5hk
2点
素直にうまいと思った。最後の二行は涙より「こうキタか」という感じでした。

都立家政◆MD76fFko5o
2点
パッと見た感じで作者の激しい繊細さを感じた。
作者が何を言いたいのかについては何も考えなかった。
「か」→「かじ」→「かじ」これだけでもう俺は好き。

たもい
1点
おしっこ。パニクラせ方上手。簡単に焦らされたので悔しい。。。でセックスだ。





準チャンプ作品
恩田朗◆/0FEgWNVKI

395 名前:Open and Shut (1) 投稿日:03/01/13 14:23 ID:xDq0cYJA
 ふと気づけば あたりは残骸だ
ぼくは赤い中古車のなかだ
ここが部屋でないのは死にそうな気分だ
サンドイッチがほしい
お茶がほしい
空はぼくの知らなかった無表情で
金色という言葉を許さない満月
ぼくの頭上から鉛色の巨大鉄球が
一瞬先には降ってくる気配を見せながら
吊り下がり静止している

  *

 国道を徒歩で進む
壁が見える
自動車からでは決して見えなかった壁だ
茂みの奥は存在し
頭の潰された女がいた

  *

 ロケットの輝き
まるでおちんちん
ぼくらの愛と夢と希望と友情のせて
とんでけー

  *


396 名前:Open and Shut (2) 投稿日:03/01/13 14:24 ID:xDq0cYJA
 ぼくは あの月を支配した
無慈悲な夜の女王とかいわれていたっけ
ぼくは あの月を支配した
そんな言葉を 地球に記した

  *

 どこまで行っても山は続いているんやねぇ
お姉ちゃん もうちょっとだよ
どこまで行っても植物は続いているんやねぇ
お姉ちゃん 頑張って
どこまで行っても地球は月やないんよねぇ
お姉ちゃん 気を確かに
どこまで行ってもあたしはあたしなんやねぇ
お姉ちゃん 許してください

  *

 鈍器で殴られても人は死なない
しかしどれくらいの重さからを鈍器というのだったか
あの
人間が何年かかっても壊せない
一生かかっても切れない
あの鎖が切れたら
あの鉄球が墜ちてくるぞ

  *


397 名前:Open and Shut (3) 投稿日:03/01/13 14:24 ID:xDq0cYJA
 ぼくらは中古車のなかで
常夜を過ごす
ぼくのは赤い
瓦礫はぼくら
鉄球は
もう墜ちた後なのかもしれない

ふと思うことも再々で

  *

サンドイッチがおいしいから
お茶の幻を見る