第十二回

お題:

チャンプ作品
うたた寝死人◆ShSU0mOg

325 名前:揺りかごを干しながら 投稿日:02/09/04 23:00 ID:xU00TGAJ
陽はあまねくそそぎ
おもい実にかがむ夏みかん
四年目のぼくらの庭で
そろえた髪が羽ひろげる

止まれないのでは、と 腰を浮かすほど
娘はしばふの波を とててて越えていく
ゆりかごのふちに手をかけて まわり 戻ってくる
ギューニューくさー ギューニューくさーと 羽根を乱して

 「その匂いはきみのものでも あったんだよ」

きょと、と止まった豚足が しらないもんっと跳ねていく
そのせなかを追うように
 まだ見ないわが子が 力づよく一歩
そらの透明がゆらぐ目で 妻がわらった

 以前のように 彼女をきれいだとは思えなくても

縁台のきょりを縮める 娘のおしりも入れないくらい
いぶかる妻の注意を ことば少なにそらしそらし

しらじらしく指した先 ゆりかごが娘と振れ
ほころぶ庭のテクスチャー
326 名前:揺りかごを干しながら(続) 投稿日:02/09/04 23:01 ID:xU00TGAJ
いまこのときが 昼のみじかい夢のように
こんな小さい子供たちも ぼくらの腕を去るのだろう
風化する ぼくと妻を かろやかに蹴りつけてそとへ
つぎの世代へ


ぼくから妻へ
 ぐん、 と娘へ
  この夏さいごの風がいく
    そしてはしゃいでいる  ゆりかご



チャンプ作品に対する批評
Canopus◆j1h.j3e.
いやあ、何でもない情景なんですが、見事に現在から未来へ吹く風を表現しきっていますね。
使っていることばも目新しいものはないんですが、それがかえって、
この穏やかな人類の歴史の1ページには似つかわしいです。
ただ、「しばふ」「きょり」は私なら漢字表記にするし、
「豚児」ということばはあるけど、「豚足」って…。
ま、それは個性ということでの2点。

撫子さん◆eEr7LE3I
3点
んー。なんとなく数字が名前のひとっぽいから、落としてあげたい作品だったんだケド、
思い違いだったら悪いので、これがあたしのチャンプー候補でっす♪☆
日常的な光景。一般的な若夫婦。かわいー子供。まだ生まれてない二人目の子。ゆりかご。
ひねりのあるレトリックに対して、内容はまったくそのまんまで、あたしが詩に欲しがるモノって
なんだか正体不明な未知の世界みたいなモノだから、そーいう意味ではあたしの
好みじゃ〜ないんだケド★この世界には色があるし匂いがあるし温度がある〜☆
なにより世界自体が風として流れている感覚に負けただよ☆よくもこのあたしを微笑ませやがったな!
で91点☆
もちろん名前当ての先入観はなし〜よ☆

霧都◆LWQf3H.k
2点
情景が浮かぶ描写が好

構造◆1Q0OhnlE
幸福の裏にある終焉の予感に 2点






準チャンプ作品
撫子さん◆eEr7LE3I

300 名前:風神(一) 投稿日:02/09/03 12:29 ID:5vB4hdsS
雷神は見たことがある
真夏の夕方4時過ぎだというのに
いきなり夜がやってきて
町は鈍いグレーに覆われた
「まるで」と思った瞬間、雨が降り出して
まだ世界の終わりじゃないんだ。ってことにだけは安心した
13階の窓から
変貌した地方都市のありさまを眺めていると
隣の屋上に立って
誰かが雷を呼ぼうとしているのに気がついた
金色のたてがみと黒いスーツが
雨なんか降ってないみたいな乾いたばたつき方で
目がないから狙いは定まらないけれど
どれかのビルを間違いなく裂こうとしていた
301 名前:風神(二) 投稿日:02/09/03 13:12 ID:5vB4hdsS
あたしはデスクの下に潜り込んで
一所懸命ポテトを食べるくらいしかできなかった

風神は見たことがない
台風吹き荒れる最中でも
空を動いて行くのは黒い風の龍だったし
台風のあとの掃除で
落ち葉を散らして遊ぶのは風の精霊だと思った
そういえば雷神が町を狙っていたあの時でも
アルミサッシの窓はかた、とも動かなかった

風神を探そうと思うようになったのは
どうしてもあの雷神のペアが欲しかったから
台風の季節がまたやってきたことだし
今年こそは見たいんだ
まずは電車の中から探してみよう