第十一回

お題:

チャンプ作品
構造◆1Q0OhnlE

230 名前:馬小屋と葡萄畑のはなし 投稿日:02/08/24 22:48 ID:lHWMMaZ4
熟成したほしくさに身を任せ、いつか僕は革張りの服を着て
北欧のようなあの、牛の匂いと
草の香りが混じった小屋を拠り所にして

いつか一個のベルを買い求め
君と一緒に鳴らしながら
とくりとくりと流れる汗粒のひとつひとつに
クローバーの葉をくっつけよう
とか

それとも
ブドウ畑の蝸牛の話をしようか。
どうしようもなく白い身体を
雨粒をぬらして葉にぺったりと
隠れているそれを
君と一緒につかまえてようとか

そういう想像をしながらぼくは
今の生活の吟味もせずにせっせと咳こんで
ごみ箱にティッシュを投げ込んで
穴の深さを測る それが僕の業の深さだったり
空気のせいさ 喘息薬の匂いは

それでもいつか髪の毛から 海のにおいをかぎわけ
ほんのひとつの波がカタツムリという貝類を
ここに置いてきぼりにしたつよい潮風を感じてみたいね

君につたえると
毒のない青酸が白いシチューのなかに
いまほんのすこしだけ混じった
そういう、いい天気だ。



チャンプ作品に対する批評
Canopus◆j1h.j3e.
甘くて現実味のない空想、そして幾分、苦味をおびた現実。滔々と話すぼく、
ちょっと毒を持った短いことばで軽くいなす彼女。
静かな生活のなかに、いろんなものがつまっています。その対比がいい。
なかでも、5連めのことばの美しさにはまいりました。最終連は、技巧に走りすぎたきらいも。
んで、5連め、いったい誰の髪の毛?の3点。

撫子さん◆eEr7LE3I
「馬小屋と葡萄畑のはなし」=2点
都会にいて、草たっぷりの土地に移り住むことを夢見てる夢見人さん☆
その夢見っぷりが丁寧に綴られて、楽しいねー☆
表現もひとつひとつ気をつけられてて、好感もてる〜☆
でも結局は夢オチといえないこともない★
あとね、これはまったく個人的な好みの問題なんだケド、このテクニック主導の「清潔感」に、
あたしの大嫌いな某ネット詩サイトの作品群と同じ匂いを感じてしまったんだよ〜★
ごめんね〜★90点☆

紅雀◆YzUnlidE
「馬小屋と葡萄畑のはなし」>3点
均整の取れているということと、詩らしい空想の広がりがあることという点を評価しました。
少しきつい言い方をすると、「減点が少ない詩」でした。
では、詩のプラスとは?それを、うまく表現することはかなり難しいのですが、言うなれば、
詩を書かずにはいられない、書かずには生きていけない、と感じさせる衝動のような強い動機。
そういう思いが、「がつん」なり「ばしっ」となり、心に衝撃を伴う、強い言葉となって表れるのだと思います。
今後のプラスの部分に期待します。






準チャンプ作品
kanon◆0ztbXCV6

242 名前: 投稿日:02/08/26 14:22 ID:1XD4FUwB
静かな風に誘われて
踏み入れたときは知らなんだ
それは夜に続く密林で
私は無邪気に葬列に並ぶ
風を見た

同調する
蛸足のような草波に絡め獲られ
もとより身から出た錆だとも
彼らは気付かないようだ

私だけを照らす月光とて
道標になりはしない
耳を衝く深い森のため息にうずくまり
一人けさざやかに呟く

躍れ躍れ風躍れ
そなた踊れば
私ともに死にたもう

地面より湧いて出た蟲たちや
遠く風に運ばれた種たちが
私の亡骸を彩ってゆく

しかし私を連れてきた風だけは
その草波に今だ迷い
私を運んではくれない