第一回

お題:4月とは何だったのか?

チャンプ作品
138 名前:名前はいらない 投稿日:02/05/08 01:20 ID:???
4月とは何だったのか

遠い場所からの
古い友人の手紙
花見の誘い
何度目だろう

慣習は郷愁へと変わり
いつも
忙しい時節で都合が悪い
季節病で体調を崩した
などと嘘をついたのは
なぜだろう

美しいまま眼に焼き付いた
懐かしい古桜
手紙は一片の花びらを包み
最後の結び
桜の下で待っていると



チャンプ作品に対する批評
Canopus◆j1h.j3e.
詩の完成度の高さ、言葉の安定度、テーマの的確さなど考える
と>>138が随一ではないかと思います。





準チャンプ作品
79 名前:恩田朗 投稿日:02/05/04 07:00 ID:J26PAOSQ
[4月とは何だったのか?]

身を締めつけていた現実感が 緩んで
やわらかいメルヘンが生きはじめる 4月
やわらかい人間の希望を 破壊するように
春の河原に ブルドーザーは 在る

洗濯女の似合うような 河で
ひとりの男が 投身自殺をした
それはどうにも 儚いようで
されどどうにも 無関心に流される死体

4月に死体は 似合いすぎる
似合いすぎてそれは 死体でなくなる
ひとつのメルヘンと なる
やわらかい桃の果肉となり 芳香を巻き散らす

ブルドーザーが狙っている
獰猛なブルドーザーが
河を流される桃を
血肉に飢えすぎた鋼鉄

建設重機の存在しない場所は ない
田んぼの中にも 在る
高層ビルの上にも 在る
人の心の下にも 在る

春の成長を嬉しがる蛙の 背後にも
ブルドーザーが 在る
建設重機の存在しない場所を
思い浮かべることができるか?

今になって思えば
それは4月の悪事
今ではブルドーザーは
従順な大型犬のように

工事現場に鎖で繋がれて いる