新10 1-
106:もうきん 12/5 10:38
「おじいちゃん」
もう薬のための水も飲み込めないし
点滴も自分ではずしてしまったので
乾ききった喉からは声も出なかった
でも毎晩寝る前に耳元で
またあしたね、またあしたの朝会おうねって頼むと
にっこり頷いてくれるんだよね
そーっとドアをしめる前にふりかえると
肘から上をがんばってもちあげて手を振ってくれるんだよね
だんだんにっこりがかすかになって
頷く角度もちいさくなって
でもそれを確かめれば毎晩安心してねむれた
よし(ФvФ)!あしたまではだいじょうぶおじいちゃんはいる
よし(ФvФ)!約束したんだからあしたの朝も会える
おじいちゃんのおむつは
ぜんぜんよごれなくなっていっていつ見てもからからで
ただおしりのかたちにまがっているだけで
食べないし飲まないしあたりまえなんだけどそれがとてもかなしくて
きれいなままのおむつをかえるときなみだがでて
なみだがでて
おむつがよごれないってさびしいね
おむつがくさくないってさびしいね
からだのなかをすっかりきれいにすてて
いってしまうおじいちゃん
夜明け前におじいちゃんは死んだから
最後の約束ははたせなかったけど
おじいちゃんまだ生きていていいって思ってくれてたんだよね
死なないでいようって思ってくれてたんだよね
寝たきりのつらい日々のなか
おじいちゃんほんとは苦しくて苦しくて毎日がつらいだけで
もう開放されたいと思ってたかもしれないね
孫がかわいそうだからつきあって頷いてたけど
おじいちゃんわたしにはかわいがってもらった思い出しかない
ひたすらかわいがってもらった思い出しかない
おじいちゃんの人生やら哀しかった出来事やらなんにも思いやった
記憶なんてない
ごめんね
ごめんね

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