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889:新月てるあき ◆aglqL.ViKQ 2/11 8:26
「ツリカケ死ス」(投稿梁山泊 第79回 お題なしより)
今老兵は
うめきをあげ
死への階段を昇ろうとしている
雨にも負けずに
叫びながら
駆け抜けた老兵は
消えようとしていた
台風の風の中も
雪の降る夜の中も
孤独に単線の線路を駆け抜け
負けずに叫びながら走りぬいた
あの勇姿はもう面影もなく
涙を流していた乗客
希望を抱いた青年
感情の雨で錆ができた
でも文句を言わずに
「プーン」と独り叫び走った
雨にも
風にも
針のように突き刺す寒さにも
燃え出しそうな暑さにも
負けやしなかった老兵も
時代の渦に勝つことはできなかった
駅のホームに
ひっそりとたたずみ
最後の時を迎えようとしていた
老兵は
カメラのフラッシュに見送られ
別れの雄叫びを上げて
最後の旅へと走り始めた
老兵は今
音も立てずに
静かに息を引きとろうとしていた
最期の時は目の前に
あの叫び声は
消え去ろうとしていた
(参考)
この詩に出てくるツリカケ列車とは
東武5070系のこと

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